平成18年度平成20年度

コミュニケーション能力の向上を目指す指導法の研究

  国語科「話す・聞く」領域の指導を通して


主題の意味するもの


(1) コミュニケーションとは

 コミュニケーションとは、相互の情報伝達のことである。相手の気持ちを尊重して話を広げたり深めたりするような双方向の話し合いの能力ととらえる。
  表現(1)(話す)→聞く(理解)→表現(2)(話す) 広まり
      A            B
     表現(話す) →  理解(聞く)
     理解(聞く) ←  表現(話す)
     表現(話す) →  理解(聞く)
     理解(聞く) ←  表現(話す)  深まり


(2) コミュニケーション能力とは

人と人が、相互理解のために、言語、記号、表情、動作などによって、情報、思考、感情を伝え合う能力のことである。  それは一方通行のことではなく、双方向の相互交流のあるコミュニケーションができる能力のことである。

  • 自分の考えを相手に理解させる力、また理解させようとする態度
  • 相手の気持ちや意図を理解する力、また理解しようとする態度
  • 相互に考えを出し合う中で、自ら成長させていこうとする力、及び態度
  • 話し合いながら、自らの考えを豊かにし、整理し、結論に導いていこうとする力、及び態度
  • 自分の置かれている場を意識し、そこに順応させ、そこから最良の考えを出していこうとする力
  • 相手と話し合う中で、その場を改善し、創造していこうとする力、及び態度
  • 話し合うことによって、人間理解を深めていこうとする態度
  • 話し合うことが、人間理解のもとにあることの認識
  • 目的遂行のためには、相互に話し合うことが最良であり必要不可欠であることの認識

 

(3) コミュニケーション能力の育成について

学校教育に求められている具体的なコミュニケーション能力とは、
  

  • 一人一人の子どもたちが、自分の思いや考えを適切に伝えることができるようにすること。
  • 相手の言うことをその人の立場にたって聞くことができるようにすること。
  • 何らかの問題に関して、双方の考えや立場を述べ合い解決していけるようにすること。

次のような基本的コミュニケーションスキルを指導する必要がある。

  • 自己実現のスキル:自分の考えや感情を相手に分かりやすく伝える。
  • 傾聴のスキル:相手の話を積極的に聞いて相手の考えや感情を理解する。
  • 問題解決のスキル:積極的に意見を出し合い、建設的に批判しあって問題を解決する。
  • 対立解消のスキル:意見や利害が対立したときに、冷静に話し合って、双方が合意する。
  • 調停のスキル:意見が対立したときに、第3者双方の言い分を聞いて調停する。

質の高いコミュニケーション能力を身につけるには、コミュニケーションスキルだけでなく、新聞、テレビ、インターネットなどのメディアからの情報収集や広い読書によって、知識や視野や思考力を深めることが必要である。   
  



本研究のめざす児童像

  • 相手の思いや考えを思いやりの心で正確に聞き取ろうとする子ども
  • お互いの考えを伝え合い 考えを深めたり 広めたりする子ども
  • 身に付けた力を実践しようとする子ども
年次計画
1年次(平成18年) よい聞き手を育てる指導を通して
2年次(平成19年) 話し合い場面の指導を通して
3年次(平成20年) 国語科を中心にしながらコミュニケーション能力の活動場面を広げる。

研究の成果と課題から次の研究を探る

研究仮説

子どもが知りたい、聞きたいと思う場面を設定し、次の手立てをとるならば、相手の思いや考えを思いやりの心をもって正確に聞き取ろうとする児童が育つであろう。

  1. 話し手が話したくなるような聞き方(うなずきや問い返しなど)をする。
  2. 学習のねらいを明確にし、評価との関連を図る。
  3. 教科や日常指導の中で、コミュニケーションの基礎・基本の定着は図る指導を行う。
仮説実証のための手立て 1,話し手が話したくなるような聞き方(うなずきや問い返しなど)をする。

コミュニケーションとは、そこに話し手と聞き手が存在し、相互に話したい内容、聞きたい内容があり交流することによって、考えが高まったり、広まったりするものである。そこには、人間関係が形成されていく。そこで、話し手が話したくなるような聞き方をすることによって、活発なコミュニケーションを生み出そうと考える。

2,学習のねらいを明確にし、評価との関連を図る。

学習活動におけるねらいと評価を明確にすることにより、子ども一人一人が学習を構想して、主体的に学習に取り組むことができるようにする。子ども達は、学習のめあてがはっきりしていたら、変容を自己評価することができる。また、子どもの相互評価も容易である。教師は、一人一人の児童がねらいを達成されているかどうかを評価する。

3,教科や日常指導の中で、コミュニケーションの基礎・基本の定着は図る指導を行う。

○話し方や聞き方

低学年 中学年 高学年
身につけたい話し方 @相手の目を見て話す。
A相手に聞こえる声で話す。
B主語を入れて文章で話す。
C理由をつけて話す。
D順序を考えて話す。
E話題からそれずに話す。

D話の中心に気をつけて話す。
E言葉遣いに気をつけて話す。

D組み立てを考えて話す。
E聞き手に合わせて話す。
身に付けたい聞き方

@相手の目を見て聞く。  
A話を最後まで聞く。
B相手の話に反応しながら聞く。
C分からないときは聞き返す。

D大事なことを聞き取る。 E自分の考えと比べて聞く。 D意図を理解して聞く。

「声をしっかり出すこと」、「語彙を増やすこと」

低学年

・口形指導  ・学習中の姿勢 ・口の体操   ・詩の暗唱  ・言葉遊び

中学年

口形指導  ・発音指導   ・姿勢指導  ・早口言葉   ・輪唱    ・群読  ・伝言ゲーム

高学年

・早口言葉  ・音読   ・台詞(アナウンス)  ・ことわざ読み   ・四字熟語  ・百人一首 ・群読

参考文献
  • 小学校学習指導要領 解説  国語編 文部科学省
  • 自己表現を目指す 国語学力の向上策  佐藤 明宏著 明治図書

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