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秋の河内貯水池 | 冬の河内貯水池 |
1.河内貯水池が作られることになったわけ
大正3年(1914年)ヨーロッパで第1次世界大戦が起きました。この戦争によって、鉄鋼の注文が多くなりました。そこで、八幡製鐵所では、鉄鋼の年間生産を75万トンにするために工場を大きくすることになりました。工場を大きくすると、そこで使う水が必要になってきます。そのために,河内貯水池が作られることになったのです。
2.貯水池が河内に作られることになったわけ
・貯水池の水は,自然落下で送ることができ電力を必要としない。
・工場に近く,貯水池の水は1時間45分で工場へ送ることができる。
・えん堤に対して貯水量が非常に大きい。
・集水面積が広い。
・工事に使う岩石が近くにたくさんある。(東河内の駐在所横の道を少し登った所に皿倉山から転落した岩石がたくさんある。)
・河内貯水池には、いくつかの川が流れ込んでいる。しかし、ほかの所と比べて川から土砂が流れ込む量が少ない。そのために,河内に貯水池を作ると長く使える。
・えん堤の下の岩盤は、花崗岩によって熱変成した粘板岩でとても硬い。
・大蔵川では、地層のずれ(断層)が見られるが、えん堤の所には地層のずれがない。そのために、地盤が安定していて水もれなどの心配がない。
3.貯水池の工事
貯水池の建設が決まったのは、大正5年(1916年)です。外国の技師に頼らず、八幡製鐵所の土木部ですることになりました。当時、土木部長をされていた沼田尚徳さんが中心になって、貯水池の設計をし工事の監督をされました。工事は、大正8年(1919年)5月に始まり、昭和2年(1927年)1月に完成しました。沼田さんは,製鐵所の仕事も忙しく、日曜祭日に河内の工事現場をまわり、その足で市の瀬峠を越えて養福寺の工事現場へも行かれたそうです。貯水池の水をせき止めるえん堤の工事は、7つのブロックに分けて行われました。
当時は、進んだ工事用の機械もなく,人の力による作業が中心でした。えん堤の基礎工事の場所からは、川に沿って土砂を運ぶトロッコの線路がしかれました。工事が始まってからは、毎日岩石を割るハッパの音がやかましかったそうです。工事が進んでくるとトロッコは汽車にかわり、線路もめがね橋の近くまで延ばされました。工事の完成が近くなると、30数軒の家と60人が他の場所へ移りました。学校が現在の場所(運動場)に移ったのは、この時です。貯水池の工事は、長い年月をかけたくさんの人が働いた大きな工事でした。しかし、この工事で亡くなった人がいなかったということです。このようなことはめずらしく、本当に素晴らしいことだと言われています。このようにして、その頃としては東洋一の大きさを誇る河内貯水池が完成したのです。
・働いた人 延べ 90万人
・工事の費用 490万円
・池のまわり 6.9キロメートル
・えん堤の高さ 44メートル
・貯水量 720万立方メートル
4.沼田さんの工夫と特色
・えん堤は,ヨーロッパのライン河にほとりにある中世の古城をイメージして作ってあります。河内貯水池のえん堤の表面には、硬い安山岩質凝灰岩を張り、強く美しく仕上げてあります。
・えん堤は、全部が一度に倒壊するのを防ぐために7つのブロックに分けて作ってあります。また、温度の変化によって割れ目ができるのを防ぐために,間に銅板を入れて作ってあります。
・えん堤は、八幡製鐵所でできた高炉セメントを使い、含石コンクリートとし、形がくずれたり腐ったりするのを防ぐようにしてあります。
・バルブは水圧によって開けたり閉めたりしています。(現在では、バルブの開け閉めは電力によって行われています。)
5.河内のシンボル白鳥
河内貯水池は市内で唯一白鳥が泳ぐ池です。白鳥は,産卵期になるとかれた木や草で作った直径60センチぐらいの巣に重さ400グラムの卵を2〜5個産みます。親が抱いた卵からは,6週間でひながかえります。毎朝,米ぬかとトウモロコシをあらびきしたものを混ぜた餌をやりに来られています。時々,魚粉や野菜の入った餌になることもあるそうです。子どもの白鳥は、親と同じ大きさですが,親のようにくちばしが赤くないのですぐ見分けができます。また、ピヨピヨと鳴くのですぐ分かります。
6.森湖休(しんこきゅう)プラン
北九州市は、自治省の「地域づくり推進事業」の指定を受け1991年度(平成3年度)から4年間かけて、河内貯水池周辺を整備して市民の憩いの場にすることにしました。貯水池を一周できるサイクリングロードや貯水池に流れ込んでいる川沿いの散歩道づくりを進めるのです。この計画を「森湖休(しんこきゅう)プラン」と名付けています。総事業費は、35億3500万円です。サイクリングロードは、1989年(平成元年)に貯水池の西側が開通しました。東側のサイクリングロード(歴史と白鳥の道)は1995年(平成7年)に完成し、貯水池を一周できるようになりました。また、えん堤の下流にも900メートルのサイクリングロード(橋めぐりの道)が作られました。散歩道づくりは、田代川、奥田川、北河内川の三ヶ所で進められました。